ご家庭の食塩が石のような塊だったら、使いづらくて困ってしまいますよね。 でも実は、塩を食用に精製しただけでは、ふだん見慣れているサラサラの状態を保っていることはできません。
今回は、人知れず活躍する「食塩の添加物(固結防止剤)」に関するまめ知識をお届けします。
塩は意外と寂しがりや?
よく見ると分かるように、塩はたくさんの結晶でできています。 この結晶のひとつひとつがバラバラになっているため、塩はサラサラしていられるのです。 ところが、私たち調理する人間にとって、塩には少し困った性質が備わっています。 そのために起こる不都合な結果は、大きく分けて2つ「析出」と「架橋」です。 どちらも聞き慣れない言葉ですが、簡単に説明すると、「析出」は結晶表面に成分の一部だけが滲み出てきてしまうこと、「架橋」は結晶同士がくっついてしまうことを言います。
この2つが起こると、塩の粒はベトベトしますし、角砂糖のようにコロンと固まってしまいます。もちろん、砂のようにサラサラ流れる状態でいられるはずがありません。 塩は思いのほか、群れを作りやすい性質を持っているのです。 このように、塩が塊になってしまうことを 「固結」と呼びます。
塩の中の隠れた働き者
防止機構 | 作用 | おもな固結防止剤 |
被膜効果 | 塩の結晶どうしが直接ふれないよう、 結晶のまわりに膜を作ります。 |
炭酸マグネシウム 微粒二酸化ケイ素など |
吸湿効果 | 水分が蒸発して塩が固まらないよう、 適度な湿気がくるようにします。 |
塩化マグネシウム (にがり)など |
乾燥効果 | 塩が溶けたり固まったりしないよう、 余分な湿気を吸収します。 |
無水リン酸ナトリウム 無水硫酸マグネシウムなど |
媒晶効果 | 結晶どうしの結合力を弱め、くっつ き合うのを防ぎます。 |
クエン酸鉄アンモニウム フェロシアン化者など |
そこで活躍するのが、固結防止剤と呼ばれる添加物です。 添加物と言うとマイナスイメージを抱く方も多いと思いますが、心配いりません。 ここでは、「にがり(塩化マグネシウム)」のような食品や栄養素としてお馴染みの成分も登場します。 塩の固結を防止する方法(機構)と、その作用を持つ固結防止剤を、表にまとめました。
塩を使いやすいサラサラの状態に保つためには、さまざまな成分が活躍しているのですね。
欧米では、海草類に多く含まれる「ヨウ素」を食塩に添加することもあります。 ヨウ素が不足すると甲状腺腫などの病気にかかるおそれがあり、ヨウ素欠乏症を防ぐためなのですが、海草類をよく食べる日本では、その心配が薄いのでしょう。 しかも、今のところヨウ素は食品添加物と認められていないので、日本国内で生産・販売される食塩に添加することも、添加された食塩を輸入することもできません。 欧米へ訪れたときに、「ヨウ素入り食用塩」を探してみてはいかがですか?