塩コラム 「塩味」岡田 正紀
「塩の雑学コラム・塩(緑)は、異なもの味な物もの」
11月のコラムは「藻塩にこめた恋心」です。
「万葉集」や「新勅撰和歌集」、「古今和歌集」などには、塩を詠みこんだ歌がありますが、もっともよく知られている歌に藤原定家の「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ」があります。
「小倉百人一首」にも選ばれている有名な歌です。 いくら待ってもやってこない恋人のことを思って、わたしの身も心も藻塩のように焼け焦がれている、という女心を歌ったものです。
「古今和歌集」の在原行平の歌には「わくらばに問う人あらば須磨の浦に藻塩たれつつわぶと答へよ」がありますが、意は「ひょっとして誰か私の消息を尋ねたら、藻塩のたれる須磨の浦で、しおたれてわびしく暮らしているよと答えてください」と、何とも情けない男心の歌なのです。
どちらも塩そのものを歌ったものではありませんが、 ちょっと、藻塩に申し訳ない感じがしますね。“塩っぱい恋心”でしょうか。